特約があったとしても、それが通常の損耗にとどまる限りは、クリーニング特約に基づく費用を賃借人の負担とすることはできないとされた事例


東京地裁 2013年5月27日判決

特約があったとしても、それが通常の損耗にとどまる限りは、
クリーニング特約に基づく費用を賃借人の負担とすることはできないとされた事例

【ケース】
 平成23年9月、賃借人Xと賃貸人Yは、賃貸期間2年間、賃料月額4万5 0 0 0 円、敷金4万5000円とする賃貸借契約を締結しました。

 なお、本契約には、賃借人の退去後に賃貸人が専門業者に委託して行ったクリーニング費用は賃借人負担とする清掃費用負担特約がありました。

 重要事項説明書には、「原状回復に要する費用は、東京都の賃貸住宅紛争防止条例に基づき求めるものとします、ただし、ハウスクリーニング費用は、賃借人の全額負担となります。」などと記載され、都の条例に基づく説明書には、「ハウスクリーニングは専門業者により実施します。この費用は賃借人の全額費用負担となります(2万5000円位が目安)。」などと記載されていました。

 Xは平成24年4月、建物を明け渡し、Yは専門の業者に委託せず自ら清掃を行い、敷金からクリーニング費用2万1000円を控除した残額をXに返還しました。

 Xは、退去に当たり清掃を行っている、Yは専門業者に清掃を委託したわけではないから、クリーニング費用を賃借人負担とすることはできないなどとしてその返還と慰謝料の支払いを求めて提訴しました。

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【解 説】

 裁判所は次の通り判示し、Xの請求を一部認容しました。

 本件清掃費用負担特約には、実際に行われた清掃の有無、程度にかかわらず、一定のルームクリーニング費用をXの負担とすることやYが清掃を実施した場合にも相当費用の支払義務がXに生じることは明示されていない。

 従って、Yが自ら貸室を清掃した場合に生じた費用をXの負担とすることについて、明確な合意があったとは認めることができず、Yが清掃したとしても、それが通常の損耗にとどまる限りは、ルームクリーニング費用をXの負担とすることはできないというべきである。Xの故意もしくは過失等により損耗が生じたかという点については、これを認めるに足りる証拠がない。

 従って、Yは、ルームクリーニング費用2万1000円を控除することはできず、敷金の残額2万1000円を返還する義務を負う。なお、慰謝料に係る請求には理由がない(東京地裁 平成25年5月27日判決)。

【総 評】

 本件では、Xの居住期間も短く、Yの清掃の内容も一通り床を拭いた程度であるなどと認定され、Xによるルームクリーニング費用の返還請求が認められています。

 クリーニング特約の効力については裁判上で争われることも多く、ほかに、「特約は、賃借人による清掃が不十分な場合に、それを補う限度での専門業者によるハウスクリーニング費用を賃借人が負担すべきものを定めた規定と解すべきである」と判示されたもの(東京地裁 平成23年1月20日判決)もあります。

 敷金精算等トラブルになりやすい事項については、重要事項説明や契約締結時に丁寧に説明し、借受希望者の十分な理解を得ておくことが望まれます。

at home TIME 2018/1月号掲載分より


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