仲介会社から虚偽の説明をされたとする賃貸物件申込者の損害賠償請求が棄却された事例


東京地裁 2016年7月12日判決

仲介会社から虚偽の説明をされたとする
賃貸物件申込者の損害賠償請求が棄却された事例

【ケース】
 不動産会社であるY1は、本件物件(所有者A社、マンション1階、床面積1180・06㎡)について、賃料月額260万円で賃借人を
募集していました。

 X(法人)は、免税店を営む目的で、平成27年6月29日に不動産会社Y2を介して、Y1に本件物件の賃貸借契約を申し込みました。

 Y1は、同年7月上旬民間信用調査会社に調査を依頼し、同月17日頃に結果を受け取りました。その後、7月21日、Y2に対し本件物件の賃貸借契約には応じられない旨回答。Y2はXに、本件賃貸借契約には応じられないと回答しました。

 Xは、「Y1に、本件物件の賃貸借契約を申し込んだ際、Y1およびY2は、本件は物販店としては使用できないにもかかわらず、使用できるとの虚偽の説明をして、本件物件の賃貸借契約を申し込ませた(不法行為①)。また、A社が依頼していないにもかかわらず、Y1は、Y2を通じて、A社の求めがあるからと虚偽の事実を告げて、信用調査に応じるようXに求めた本件調査は、A社の名を騙った不当な調査である(不法行為②)。さらに、Y1は、Y2を通じA社が本件賃貸借契約を断ったとの虚偽の事実をXに告げた(不法行為③)。これらによりXの計画は頓挫し、Y1およびY2の不法行為①③によって少なくとも3億円の損害が生じ、Y1の不法行為②によって名誉毀損に基づく慰謝料1000万円が生じた」とし、Xは、Y1・Y2について各100万円の損害賠償を請求する本件を提訴しました。

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【解 説】

 裁判所は、次の通り判示し、Xの請求を棄却しました。

(1)不法行為①については、本件物件が物販店として使用できないことを認めるに足りる証拠はない。物販店としての使用自体が禁じられているものではないと推認される。

(2)不法行為②については、Y1が、Y2を通じて、A社の求めがあるとの事実を述べたことを認めるに足りる証拠はない。また本件が高額賃料物件であることに照らせば、賃貸人側において賃借人の信用調査を行うことに違法性は認められない。そうすると本件物件の賃貸借契約締結において一定の審査権限があったと推認されるY1が、Ⅹの信用調査を行ったことが、Ⅹとの関係で不法行為になるとは認められない。

(3)不法行為③については、A社が本件賃貸借契約を断ったことが虚偽であると認めるに足りる証拠はない。Y1は、A社の所有物件について、賃貸借の仲介等を任されていたこと、本件が高額の物件であることに照らすと、Y1において、賃借の申込みについて一定の審査権限があったものと推認される(東京地裁 平成28年7月12日判決)。

【総 評】

 本件は、賃借申込者の主張する虚偽説明について、証拠不十分として認められず、仲介会社には不法行為はないとされた事例です。賃借申込者のいわば「言いがかり」ともとれる事案ですが、不動産会社としては、かかるトラブル回避のためには、取引の関係者に対し、常に信義を旨とし誠実に業務を遂行し、営業記録も的確に残しておく必要があるでしょう。

at home TIME 2018/4月号掲載分より


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